
特別な一着を仕立てる喜び:オートクチュール
仕立て服の世界は、大きく分けて既製服と仕立て服の二つの世界に分けられます。洋服店などで見かける、あらかじめ決まったサイズで大量生産された服が既製服です。一方、仕立て服は、お客さま一人ひとりのために、型紙作成から縫製までを一貫して行う、完全な注文服です。仕立て服の中でも最高峰に位置するのが、オートクチュールと呼ばれる服です。「高級仕立て服」を意味するフランス語で、世界に一つだけの特別な一着を仕立てます。
オートクチュールと既製服の大きな違いは、服作りに対する考え方にあります。既製服は、あらかじめ決められた型紙に基づいて作られます。一方、オートクチュールは、お客さまの体型を細かく採寸し、その人に完璧に合う型紙を一から作成します。お客さまの好みや着用シーン、合わせる小物なども考慮に入れ、デザイン画を描き起こします。生地選びも、お客さまと相談しながら、世界中から厳選された最高級の素材を使用します。
縫製も熟練した職人たちの手によって、一針一針丁寧に行われます。ミシンだけでなく、手縫いも駆使し、細部にまでこだわり抜きます。ミリ単位の調整を何度も繰り返し、体に吸い付くようにぴったりとフィットさせます。まさに魔法のように、着る人の魅力を最大限に引き出します。
オートクチュールは、完成までに途方もない時間と手間がかかります。そのため、価格は非常に高額になりますが、それだけの価値がある、まさに夢のような服です。芸術作品を生み出す過程そのものと言えるでしょう。単なる服ではなく、着る人の個性を表現し、特別な瞬間を彩る、かけがえのない宝物となるでしょう。