
忘れられた婚礼衣装、カラーレットの魅力
カラーレット、別名カラースリップ。聞き慣れない言葉に首をかしげる方も少なくないでしょう。これは、かつて結婚式で新郎が正装であるモーニングコートを身にまとう際、ベストに添えられていた白い襟飾りのことです。モーニングコートのVゾーンに沿ってあしらわれた白く輝くカラーレットは、新郎の凛とした姿をより一層引き立て、式典にふさわしい格調高い雰囲気を醸し出していました。襟元を彩る白いアクセントとして、まるで新郎の胸元に咲いた花のように、華やかさを添える役割を果たしていたのです。
カラーレットの白い色は、純粋で汚れのない新郎の心を象徴する意味合いも込められていたと言われています。また、白い襟は清潔感や誠実さを印象付ける効果もあり、新たな門出に立つ新郎にぴったりの装飾品と言えるでしょう。かつては、カラーレットは結婚式には欠かせないものとされ、新郎の正装を完成させる重要な要素でした。
しかし、時代の流れとともに、結婚式も多様化し、格式張ったスタイルではなく、カジュアルなスタイルが選ばれることも多くなりました。それに伴い、モーニングコートを着用する新郎も減り、カラーレットを見かける機会はめっきり少なくなってしまいました。今では、ほとんど使われることのない、忘れられた婚礼衣装の一つとなってしまったと言えるでしょう。かつての結婚式の写真などで見かけることがあれば、その白く可憐な輝きに、古き良き時代の結婚式の雰囲気を感じることができるかもしれません。