古式行事

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演出

箸取りの儀:幸せを運ぶ古式ゆかしい儀式

「箸取りの儀」とは、古都京都で、かつて公家の婚礼の際に執り行われていた儀式です。歴史を紐解くと、平安時代まで遡ると言われています。当時、貴族社会において婚姻は家と家との結びつきを強める重要な意味を持っていました。その中で、この儀式は両家の繁栄と末永い幸福を願う象徴的な儀式として、厳かに執り行われていました。 具体的には、新郎新婦が並んで座し、美しく盛り付けられた菓子を、共に箸を用いて一つ一つ丁寧に皿に取り分けていきます。そして、取り分けた菓子を列席者に振る舞うのです。この所作一つ一つに、両家の結びつきを大切にし、皆で喜びを分かち合うという深い意味が込められています。 用いる菓子は、鶴や亀などの縁起の良い形をしたものや、色鮮やかなものが選ばれ、見た目にも華やかさを添えています。また、箸は夫婦箸と呼ばれる特別なものを用いる場合もあります。これらの品々は、儀式に更なる重みと格調を与え、列席者たちの記憶に残る美しい情景を描き出します。 現代では、結婚式そのものが簡略化される傾向にある中、箸取りの儀はあまり見られなくなりました。しかし、古き良き日本の伝統を重んじる風潮も高まりつつあり、一部の結婚式場や料亭では、希望する新郎新婦のためにこの儀式を執り行う場合もあります。 箸取りの儀は、単なる儀式ではなく、日本の伝統と文化、そして家族の繋がりを深く感じることができる貴重な機会です。古式ゆかしい雰囲気の中で行われるこの儀式は、新郎新婦にとってはもちろん、列席者にとっても忘れられない思い出となることでしょう。