
寿留女:縁起担ぎの贈り物
寿留女(するめ)は、古くから結納の席で贈られてきた縁起物です。一見すると、乾いたイカの姿という印象ですが、その中には嫁ぐ女性への温かい願いが幾重にも込められています。
寿留女は、漢字で「寿留女」と書きます。この三文字それぞれに、未来への希望が込められています。まず「寿」という字には、長寿と幸福への願いが込められています。これは、新しい家庭で末永く幸せに暮らしてほしいという、贈る側の切なる思いを表しています。次に「留」という字は、嫁ぎ先にしっかりと根を下ろし、長く留まってほしいという願いを表しています。そして最後の「女」という字には、良き妻、良き母となって、家庭を支える女性になってほしいという願いが込められています。
するめいかを干物にした寿留女は、保存がきくことから、末永く続く幸せを願う象徴としても考えられてきました。また、するめいかにはたくさんの子がいることから、子孫繁栄の願いも込められていると言われています。
このように、寿留女は単なる食べ物ではなく、嫁ぐ女性への様々な願いと祝福の象徴として、結納の品に選ばれてきたのです。現代では結納の儀式を簡略化したり、行わない家庭も増えていますが、寿留女に込められた意味を知ることで、日本の伝統的な結婚観や家族観を感じることができるでしょう。贈る側の深い愛情と、新しい人生を歩む女性への温かい祝福が、この乾物に込められていることを改めて感じさせられます。