
嫁入り道具と荷送り:古き良き風習
荷送りとは、結婚を目前に控えた女性が、新しく生活を始める住まいへ家財道具を運び入れる日本の伝統的な習慣です。かつては「嫁入り」と呼ばれ、女性が実家を出て夫の家に嫁ぐ際に、親が娘のために用意した婚礼道具一式を送り出す儀式でした。
婚礼道具には、寝具や食器、家具、衣類など、新生活に必要なものが一通り揃えられていました。これらの品々は、女性が新しい家庭で円満に暮らせるようにとの親の愛情と願いが込められた、とても大切なものでした。嫁入り道具の準備は、親にとって娘の結婚準備の集大成であり、地域によっては近所の人々も手伝い、盛大に行われていました。
荷送りを行う時期は、一般的に結婚式の2~3週間前の、暦を見て縁起の良い日を選んでいました。これは、結婚式当日に慌てることなく、新生活をスムーズに始められるようにという配慮からでした。荷送りの日には、親族や近所の人々が集まり、無事に荷物が新居に届くようにと見送りました。
しかし、現代では核家族化が進み、生活様式も大きく変化したことで、荷送りの習慣は簡略化される傾向にあります。結婚前に新居で同棲を始めるカップルも増え、以前のように大規模な荷物を送ることは少なくなりました。また、必要なものは新居に引っ越してから一緒に買い揃えるという夫婦も多くなっています。
とはいえ、荷送りという古くからの習慣には、親の愛情と新しい門出を祝う気持ちが込められています。形は変化しても、その精神は大切に受け継がれていくことでしょう。